エンジニアにとってのいやな感じ

医療にかかわる人が感じる医療器械の数値に表れない「いやな感じ」について、ソフトウェアエンジニアの立場からも非常によくわかる。


ユーザが満足するシステムはプロジェクト全体の1割くらいしかないという話があるのだが、これはユーザのイメージとエンジニアのイメージがずれている「いやな感じ」を最後まで修正できなかった結果なのだろうと思う。もちろん設計の段階でユーザの業務内容を何度もインタビューして要件定義書を作り、概要設計書や画面設計書をおこしてユーザにレビューをするという手順を繰り返す。成功するプロジェクトではこの段階でエンジニアが「いやな感じ」を解消できているのだと思う。逆に「いやな感じ」を取り除けないとユーザが言ったとおりに作っているのに実際の業務では使えない、非常に使い勝手の悪いものになる。


ユーザが話している内容は正しいはずだがどのようなシステムが必要であるかはユーザはわからない。エンジニアにはそれを感じる「直観」が必要なのだ。医療器械もその機械が持つセンサーの範囲において状態を正しく伝えているはずだが、総体として患者の状態を表しているわけではない。極端に言うとものとしての状態を表しているだけだ。経験のある医者が人として患者を見るときに機械が感じない何かを感じ取ることはあるはずだと思う。


医療器械に話を戻すと測定結果を表示する、わかりやすいインターフェイスにするなどの改善はいろいろできる。しかし直観はプログラムできない。もちろん測定結果の統計から機械的(まさに機械的)に判断できる事例が増えればそれについてはプログラムできる。しかし人間のセンサー(感覚)と機械のセンサーに差がありすぎるのでやはり人間の判断は絶対必要だと思う。