原発事故の状況が悪い方にブレるのは何故か

私は開発者であるので、プロジェクトマネジメントに関する記事や本をよく読む。そこで失敗するプロジェクトにありがちなこととして、最前線のアラートが上部に伝わらないことが典型的である。

その原因として典型的なのは、悪い報告を許さない上司である。悪い報告を現状として受け入れてくれない上司に対しては、どうしても悪いことは小さく、もしくは問題がないように報告される。そして本当にどうしようも無くなってから、報告が上がる。その時点では挽回にかかるコスト、リソースも大きくなる。誰が見てもまずい状況にならないと報告できないからである。

ここで悪い報告を許さない上司とは誰だろう?東電、原子力保安院、政府?
私は国民だと思っている。日本人は唯一の被曝国であり、核兵器原発事故に対する国民感情は敏感だ。もちろんリスクとベネフィットに対するバランス感覚を持った国民も少なくないと思うが、それはサイレント・マジョリティである。また豊潤な電気の利を受ける事に対し、リスクを背負う事には消極的な人が大半だろう。

今回の原発事故をうけ、今までうけていた利の大きさと同時にリスクの大きさを多くの国民が知った。誰が見ても明らかな危険状況が露呈した。我々は愚かな上司であったと思う。今後エネルギー施策について、リスク、コスト、将来性など多くの観点から考えていかなくてはならないだろう。